「青菜に塩」という言葉がありますね。
青々とした葉物野菜に塩をふりかけておくと、しなっとしおれてしまうことから転じて、今まで元気だった人が急にしょんぼりと元気をなくしてしまうことをいいます。
この「青菜に塩」の現象は、「浸透圧」という力の働きで起こります。
細胞を包む膜を「細胞膜」といいますが、この細胞膜をはさんで、細胞の内側と外側とで液体の濃度が違う場合、お互いに同じ濃度になろうとする力が働きます。
この力が「浸透圧」なのです。
つまり青菜に塩をふると、外の塩分濃度が高くなりますので、これを「同じ濃度にしよう」と青菜のほうから水がしみだしていく、というわけです。
これと同じ現象は、砂糖でも起きます。
果物でジャムを作るとき、はじめに果実に砂糖をまぶし、そのまましばらく放置するという処理をします。
すると「浸透圧」のはたらきで、果実に含まれる水分が外へしみだしてきます。
できるだけ果実からたくさんの水を引き出して煮詰めていくには、このひと手間を加えることで効率がよくなるわけです。
ところで、このようにして砂糖をたっぷり使って作るジャムが腐りにくいのは、なぜでしょうか。
食品には多くの水分が含まれているものと、ほとんど水分が含まれていないものがあります。
たとえば、生の大根にはたくさんの水が含まれていますが、乾燥して作る切り干し大根は、当然のことながらカラカラで、水分はずいぶん少なくなります。
どちらが腐りやすいかといえば、これまた当然のことながら生の大根の方が早く傷みます。
このことを私たちは経験的に知っていますが、なぜ生の大根の方が腐りやすいのでしょうか。
これも経験として、「水分が多く含まれるから」という理由を私たちは知っています。
では、水分を多く含むはずのジャムはなぜ腐りにくいのでしょう?
実は食品中に含まれる水には2種類あって、食品のなかを自由に移動することができる水を「自由水」といい、たんぱく質や炭水化物などに強くひきつけられていて動きにくい水を「結合水」といいます。
「自由水」は細菌やカビにも利用されてしまうので、「自由水」とカビや細菌が結びつくと食品が傷んでしまいます。
生鮮食品は新鮮であるがゆえに、この「自由水」をたくさん含んでいます。
ですから、早めに食べるか、加工するかしないと、すぐに傷んでしまうわけですね。
しかしジャムの場合、加工の過程で砂糖と結びついた果実の「自由水」は「結合水」という腐りにくい水に変化します。
ですから、たっぷりの砂糖で煮詰めたジャムは保存性が高くなるのです。
