お砂糖コラム5 ステイタスシンボル

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スコーンやサンドウィッチ、ケーキなどと共に、午後のひと時にお茶を楽しむアフタヌーン・ティーの習慣は、イギリスを代表する食文化の一つです。
女性たちの社交の場として発展してきたこの習慣には、日本の茶道同様、正式にはいろいろな作法がありますが、最近はホテルなどでも気軽に楽しめるようになりました。

ではその作法などでよく見られる、紅茶に砂糖を入れて飲む習慣はどのように生まれたのでしょうか?

ヨーロッパにお茶がもたらされたのは、やはり大航海時代にアジアとの貿易がさかんに行われるようになってからです。
とはいうものの、それが緑茶なのか、ウーロン茶なのか、あるいは紅茶かということまではよくわかっていません。

しかし、日本や中国では、茶はもともと薬として扱われていましたので、喫茶の風習が広まるまでは、ヨーロッパでも同様に薬として珍重されていたことは間違いないようです。
風邪や頭痛、胆石etc……と、砂糖のように万能薬扱いをされていました。

もっとも、お茶は砂糖とは異なり、現代ではむしろその「薬効」が科学的に証明されつつありますが。

さて、ヨーロッパに喫茶の風習が始まったのは、当然のことながら富裕層である王侯や貴族たちの社会からでした。
なぜ、どのような経緯で紅茶に砂糖が入ったのかは不明ですが、同じ時代に「茶」も「砂糖」も、ともに貴重な薬として扱われていたことを考えると、大変高価な品物であったことは確かです。

それを「同時に味わう」という行為は、贅沢以外の何物でもなかったことでしょう。
つまり、両者を同時に味わうことができるだけの富と身分をもっているということを示すステイタスシンボルだったわけです。

やがて、17世紀の後半になると、イギリスでは砂糖の輸入量が激増します。
つまり、砂糖が安く手に入るようになったわけです。

そうして次第に庶民にも紅茶に砂糖を入れて飲む、という習慣が定着し、これによりイギリス独特の食文化が築かれ、次第に紅茶に砂糖を入れて飲む習慣が世界に広がっていくこととなりました。