お砂糖コラム4 万能薬

ヨーロッパの人々が砂糖の存在を知ったのは、紀元前4世紀ごろと言われています。
中にはアレクサンドロス大王の東方遠征のときからだという説もあります。

以後、砂糖はイスラム商人の手を経て、西へ西へと伝わっていきました。

そもそも、ヨーロッパはサトウキビの栽培に適した気候ではありません。
現在でも、地中海沿岸の地域で栽培されている程度です。

どんなに欲しくてもヨーロッパでは基本的に大量生産することができないものですから、常に絶対的な需要過多、供給不足な状態です。
砂糖はたいへん貴重で高価なものとして取引され、その用途は現在のような調味料や食品としての扱いではなく、「薬」として珍重されていました。

そもそも今日のようにいろいろなものから栄養が摂取できる豊かな時代ではなかったため、カロリーの高い砂糖は、弱った病人の栄養補給には即効性があったことでしょう。
その効能は、熱病、咳、唇の荒れ、胃病などなど、さらには結核やペストにまで効くと信じられていた時代もあったと言われています。

ただし、16世紀ごろにはすでに虫歯の原因になることは知られており、やがて砂糖はお茶やカカオなど、さまざまな他の食品と結びつくことにより薬としてではなく「食品」として扱われるようになっていきました。

ところが、「そんな時代もあったねと」、という歌の文句ではありませんが、現在では「薬」どころか、逆に健康を害するものとして摂取を控えようという状況にあります。

実際、ジュースや菓子類に含まれる砂糖の量を角砂糖など換算して視覚的に表されると、ドキッとすることがありますよね。
万能薬としてもてはやされた時代から一転、ダイエットや生活習慣病の大敵として、肩身の狭い思いをすることになった砂糖ですが、その一方で、さまざまなスイーツが年ごとに流行する社会となりました。

「おうちカフェ」などという言葉とともに、コンビニエンスストアやスーパーなどで売られているケーキも、絶大な人気を誇ります。
お砂糖が生み出すその「甘い魅力」には、やはりなかなか対抗するのは難しいのが現実のようです。