お砂糖コラム3 砂糖。その暗黒の歴史

砂糖の主原料であるサトウキビの世界的な産地は、ブラジルやカリブ海の沿岸地域です。
これは、大航海時代に欧米列強が植民地として支配していた地域に重なります。

17世紀(日本では江戸時代が始まったころ)、カリブ海の島々はスペインによって支配されていましたが、特に大きな産業もなく、むしろ映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』で描かれたように、海賊たちが跋扈(ばっこ)していた海でした。

ところが、ここでサトウキビ栽培が始まると状況が一変します。
これらの島々では、広大なプランテーションが開発され、ただひたすらサトウキビだけが栽培されるようになりました。

カリブ海の島々で作られた砂糖は、イギリスをはじめとするヨーロッパやアメリカへ送られ、高値で取引されました。

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こうしたプランテーションを支えたのは、奴隷たちです。
はじめは、先住民たちが奴隷として使役されていましたが、やがてあまりに過酷な労働のために、次々と滅亡していきました。

その人手不足を補うために、今度はアフリカの人々が奴隷として連れてこられたわけです。
奴隷狩りが行われ、とらえられた人々はやがて荷物のように船に詰め込まれて、大西洋を渡りました。
その船旅は、たいへん過酷なものであり、多くの人がこの船旅で命を落としたといいます。
無事にカリブ海沿岸の島々に到着しても、今度は慣れない土地での過酷な労働と伝染病などにより、さらに多くの人が犠牲となりました。

16~19世紀にかけてカリブ海やブラジル、さらにはアメリカ南部に奴隷として送られたアフリカの人々は、推計で1000万人以上ともいわれています。

こうした奴隷たちの犠牲の上に生産された砂糖を使うことができたのは、欧米の富裕層でした。
ですから、貴重な砂糖をぜいたくに使って作られるシュガー・クラフトは、富の象徴だったわけです。

やがて、喫茶の風習と結びつくことによりアフタヌーン・ティの習慣が生まれ、カカオと結びつくことによりチョコレートが生まれというように、次第に庶民にも砂糖が広まっていきます。

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しかし、甘く華やかな歴史がある一方で、「砂糖のあるところに、奴隷あり」といわれるほど、多くの奴隷が過酷な労働を課せられていたという暗黒の歴史が、砂糖にはあるのです。