なんとも甘美な響きのする「バター」、ここではバターの特徴を学んでいきましょう。
出来立てのパンケーキや、ソテーに大活躍のバターは、お菓子作りにも欠かせない存在です。
クッキーの素材を知るための最後を締めくくるのがこのバターです。
バターの種類
簡単に説明すると、乳の中に含まれている「乳脂肪」を凝集して固めたのがバターです。
私たちの生活では牛乳から作られるバターが身近ですが、世界各地にはいろいろな家畜の乳で作るバターがあります。
さらに、その製造方法によっても種類が分けれられています。
バターの製造方法
バターには、「発酵」をさせるかさせないか、「塩」を加えるか加えないかという2つの製造方法があります。
日本国内で一般に販売されているバターは、多くが「非発酵」「加塩」のものです。
こうした一般的な食卓に出てくるバターは、トーストやパスタなどに利用するとき、適度に塩味があるのでおいしく感じられますが、お菓子作りをする際にはこの塩味が邪魔になってきます。
そのため、お菓子を作るときには「無塩バター」を利用します。
保存性はあまり高くないため、できるだけ使い切ってしまうよう心がけましょう。
ところで、日本で販売されているバターは、多くが「非発酵」のものですが、ヨーロッパでは「発酵バター」が主流です。
発酵バターは製造過程で乳酸菌による発酵が行われるので、独特の風味や芳香が加わります。
ヨーロッパで酪農が盛んな地域では、こうした良質な発酵バターが生産され、世界的にも高い評価を得ています。
日本のようにパッケージに入ったものだけではなく、量り売りもされています。
近年、日本でも消費者のニーズが高まってきたことによって、国内でも「発酵バター」の生産が増えています。
また、フランスなどEU産のものには、「PDOまたはPGI(フランスはそれぞれAOPとIGP)」というマークのついたものがあります。
これは「原産地名称保護制度」という制度によって、認証された食品です。
特定の地域で生産される高品質な農産物や食品にのみ付与されます。
バターの中にもこの認定を受けた高品質なものがありますので、ぜひ探してみてください。
サクサク感の秘密はバター
クッキーのポイントは何と言ってもそのサクサク感です。
このサクサク手作りクッキーの成功の秘訣は、バターの温度調整にあります。
クッキーの主材料である小麦粉には、「グルテニン」と「グリアジン」という2種類のたんぱく質が含まれています。
これらに水を加えてよく練ると、「グルテン」ができます。
このグルテンが粘り気(粘性)と、ハリやコシ(弾性)を生み出します。
パンの生地を作るときに最初はボソボソの状態でも、よく練っているうちに粘弾性が出て最後にはなめらかにまとまるのはこれらの性質がカギになっています。
しかしこれはパンの場合で、クッキーでこの状態の生地にすると大失敗につながります。
クッキーの場合にはさくっとした軽やかな口当たりが必要となりますから、ある程度この粘弾性を抑制する、つまりグルテンの形成を抑える必要があります。
このときに活躍してくれるのがバターなのです。
■バターの性質を活かすための温度管理■
バターがこの力を発揮するためには、条件があります。それが温度です。
温度が低すぎても、逆に高すぎてもサクサク感を出すために必要な力を発揮することができません。
つまり、冷蔵庫から出したばかりのカチカチの状態でも、レンジで溶かして液状にしても良くない、ということです。
適温は、13~18℃くらいが目安となります。クッキーを作るときに限らず、お菓子作りの際に「バターは室温(常温)にもどしておく」という指示があるのは、こうしたバターの性質を十分に引き出すためだということを理解しておきましょう。
■Lesson3-4 まとめ■
・バターには「発酵」をさせるかさせないか、「塩」を加えるか加えないかという2つの製造方法がある。
・日本で主に製造されているのは「非発酵」「有塩」が多い。お菓子作りに適しているのは「無塩」タイプが適している。
・ヨーロッパでは、製造過程で乳酸菌による発酵が行われる「発酵バター」が主流。独特の風味や芳香が加わり世界的にも評価が高い。
・小麦粉には、「グルテニン」と「グリアジン」という2種類のたんぱく質が含まれており、これらに水を加えてよく練ってできるグルテンが粘り気(粘性)と、ハリやコシ(弾性)を生み出す。
・サクサクとした食感のクッキーをつくるためには、粘弾性を抑制する、つまりグルテンの形成を抑える必要がある。このとき活躍するのがバターである。
・グルテン生成を押さえるためには、バターの温度が重要で13~18℃くらいが目安とされている。お菓子作りの際に事前に室温に戻しておくことが注記されていることが多いのはこのためである。


